ベインキャピタルによる雪国まいたけのTOBが異例といわれる理由は?メインバンクがとった担保権行使の強硬手段とは!?
2014年2月24日から4月6日まで30営業日の期間で実施された、
ベインキャピタルによる雪国まいたけのTOB(株式公開買付け)は、
担保権の行使をTOBに用いる前例のない異例な手法であると注目されていますが、
よくわからないのでどういう経緯で行われたTOBなのか、調べてみました。
話題のまいたけ。高級品種だったまいたけを人工栽培によって
低価格にしたのが雪国まいたけ創業者の大平喜信氏だそうです。
雪国まいたけTOB成立までの経緯とは
今回のTOB(株式公開買付)の実施主体者はベインキャピタルですが、
首謀者は雪国まいたけ現会長兼社長である鈴木克郎氏とメインバンク。
その目的が創業家(創業者一族)の経営関与の排除を狙って仕掛けられたというので、
事情は穏やかではありません。雪国まいたけ内紛については過去記事にまとめたとおり。
⇒雪国まいたけお家騒動<前編> / 雪国まいたけお家騒動<後編>
メインバンク(メーンバンク)とは、複数の取引銀行の中で、
最も多額の融資を受けている銀行のこと。雪国まいたけにとっては、
新潟市中央区の第四銀行であり、他にも6行から融資を受けていました。
過去に不正経理やコンプライアンス違反が発覚している創業者大平氏の
影響力を薄めていく方針を打ち出した現社長鈴木氏に対して不満を抱く大平氏を、
雪国まいたけの経営から排除するために鈴木氏がとった苦肉の策が今回のTOB。
しかし、雪国まいたけの株式は過半数の64%を創業家サイドが保有しており、
第三者であるベインキャピタルが経営権を握るため株式公開買付けを実施したところで、
創業者である大平氏が株式を手放すわけもなく、このTOBは成立するはずがありません。
そこでメインバンクがとった秘策中の秘策が、担保権の行使。
メインバンクの第四銀行など6行は、
雪国まいたけの株を担保に大平氏に融資をしており、
その借金の返済が滞っていたことを理由に担保権の行使に踏み切りました。
その結果、第四銀行は雪国まいたけの39.23%を保有する筆頭株主になり、
同様の措置をとった他バンクと合計で5割超の株式を確保し、その全株をTOBを進める
ベインキャピタルに売却するという強行手段に出たのが今回のTOB成立の内情。
株を担保にお金を貸していた銀行が、
借金の返済が遅いじゃないかと創業家から担保の株を取り上げ、
第三者であるベインキャピタルに売却(横流し)してしまうという荒業。
この前代未聞かつ用意周到な対応に、大平氏はまったく対応できず、
これらの措置に対して創業家サイドが裁判所に不服申し立てをする可能性は
残っていたものの、大平氏は3月に入って臨時株主総会の開催を取り下げており、
雪国まいたけの経営権をめぐる争いは、このまま収束する可能性が高いとみられています。
今回の雪国まいたけのケースは、メーンバンクや東京証券取引所が
創業家のコンプライアンスを問題視していたというお墨付きもあり、創業者である
大平喜信氏の経営への関与も著しかった為、やむを得ない感がありますが…。
今後も同様の手法がTOBに採用される可能性を指摘する見方もあり、
ケースによっては経営再建を果たせないことも想定され、議論を呼びそうです。
雪国まいたけの経営権をめぐるお家騒動について、詳しくはこちら
⇒雪国まいたけお家騒動<前編> / 雪国まいたけお家騒動<後編>
TOB(株式公開買い付け)ってなに?と思った方は、こちら
⇒TOB(株式公開買い付け)とは?take over bid(テイクオーバービッド)・tender offer(テンダーオファー)など、英語圏での表現は?